面白いらしいというのを週刊文春ミステリーベスト10で見かけたので読んでみた。読んでみたのだけど、今ひとつ何が面白いのかよく分からなかった。

未読の方に一切配慮せず、ネタバレがあってもいいから概略知りたいというひとも考慮せず、淡々と何が腑に落ちないのか語ってみる。読んだことある人から解説が貰えたらありがたいなーとか、そんな感じのスタンスで書きます。

だから「気にはなってるんだけどまだ読んでないんだよなー」という人は読まないでね。いや、見てもいいんだけど、読んだ後で「ネタバレすんなよ!」と文句言わないでねというエクスキューズをまず先にしておく。

まったくもって面白くなかった、つまらなかった、駄作だった。と言いたいわけではない。面白いとは思うのだけど、言うほど面白いのだろうかというのが、読み終わった最初の感想。面白いと言われるからには、何か私が気づいていない、読み解けていないカラクリがあって、それが分かったら面白いのだろうかと逆に気になった。

長い長い第一部が実は犯人の書いた小説だったという、本書の構造が分かった時は「おおっ」って驚いた。カミーユが自分の操作していた事件が実は犯人の書いた小説の通りだったというのを読んでいるシーンが描かれた小説。そして実際にそれを読んでいるカミーユ。そんなカミーユを「悲しみのイレーヌ」を通じて読む読者。そんなマトリョーシカみたいな構造が面白いとは思う。そこから誘拐されたイレーヌを探して捜査をすすめる緊迫感がよかった。

でもそれが最高到達点で、後は「ん?」って感じとでも言おうか。緊迫感はあるんだけど、一方で「ドユコト?」と置き去りにされている感じも味わってしまい、オチもよくわからなかった。

本作は続き物で、「その女アレックス」が続編となっているらしい。で、そちらに本作のネタバレが含まれているらしい。だからそっちも読んでみないと面白さがわからないのかもしれない。

なんでよくわからないことになったかというと、第一部が犯人の書いた小説だからだ。つまり、それまで作中で起きていることだと思って読んでいたことが、犯人の創作物であったことになってしまい、それまで起こったことや登場人物の人物像なんかがそこで分からなくなってしまったのだ。いきなり足場が消えてしまった。でも物語の緊張感は最高到達点で、クライマックスに向けて一気に畳み掛けられている。でも私の足場は消えてなくなってしまった。

だから最後の方の展開が全然頭に入ってこなかった。現場が判明して急行してるカミーユたちが事故ったりしても「何やってんだこいつら」みたいな感じ。

この作品が面白いっていうのは、本書の構造(第一部が犯人の書いた小説であったこと)のことを言っているのかなぁ。面白いとは思ったけれども、構造に気づいた瞬間は興奮したけど、すぐにしぼんでしまった。

それもこれも、犯人の書いた小説である第一部を、どこまで信じて読めばいいか分からないからだ。登場人物名が違っていたり、カミーユが若干美化して書かれていたりするものの、大筋においてはだいたい小説と実際の出来事は同じらしい。

でもそうすると、どうやってカミーユの身の回りの出来事まで知ったのかということが疑問になる。カミーユが美化して描かれていること、また最後に犯人の手紙にある「奥さんを殺したのはわたしでもあり、あなたでもあるんじゃありませんか?」という言葉から、実はイレーヌ自身も犯人への情報提供者だったのではないのかなとは思う。要するに、カミーユは実際にはそこまで奥さんに気を回せていなくて、それを不満に思っていたイレーヌが記者に情報を提供していたっていう。

ただそれを含めて考えても、やっぱり面白いとは思えないんだよなぁ。本作の続きである「その女アレックス」も読んでみたら、もっと面白さが分かるんだろうか。

ご意見はこちらまで